かみ癖について
かみ癖とは、食事の時に最初に噛む位置に癖がある場合のことをいいます。
かみ癖はすぐに調べることができます。患者さんの舌の真ん中に、ロールワッテという円柱状の綿を置きます。そして、奥歯の好きなところで噛んでいただきます。その際、95%以上の患者さんが、噛み癖のある側で綿を噛むと言われているんですね。脳科学の分野で明らかになっていることとして歩行・呼吸・嚥下・咀嚼は無意識行動でmuscle engramと呼ばれる筋肉への刷り込み(痕跡)により
自動的に(ループ化)行うことが出来ます。咀嚼時の無意識の癖でいつも同じサイドに偏って咀嚼し続けることが顎関節症発症に関する最大のリスク要因と当院では考えております。
習慣性咀嚼側とかみ癖は違います
ちなみに、「噛み癖」と「習慣性咀嚼側」とは違います。習慣性咀嚼側とは、咀嚼する際に主に使用している側を指します。人は、左右の顎のどちらかが咀嚼をする「作業側」、咀嚼をしない「平衡側」に分かれます。食事をする行為は、口を開ける段階からすでに始まっています。作業側と平衡側と分かれていることから、作業側と噛み癖側は同じということになります。口を大きく開ける時、顎関節部の骨が前に移動します。
バランスを取るための平衡側
食べ物を噛む時は、下顎をズラさらければいけません。下顎がズレない側の作業側(噛み癖側)と、大きくズレるサイドがバランスを取るための平衡側となります。
ところが、この作業側(かみ癖側)になった方は奥歯だけ噛もうとし、それが習慣化すると固定化したかみ癖側(作業側)の顎は前に出てこれなくなります。それが下顎の運動障害を引き起こして顎関節症になるわけです。
かみ癖を改善(矯正)
作業側(噛み癖)の奥歯のみで食べ物を食べることは良くありません。顎関節症や歯に浮遊感を感じる患者様、原因不明の咬合痛(かんだ時の痛み)を感じる患者様に対しては、このかみ癖を改善するよう指導しています。
歯が悪くなるのは虫歯や歯周病だけではありません
当院は他院とは異なり、歯の使い方、噛み方を特に重要視しております
患者様は食べ物を噛むのは奥歯だと考えています。そのため、前歯の使い方など本来の役割についてご存知ありません。歯は虫歯や歯周病だけで悪くなるわけではなく、食べ物の噛み方でも悪影響を及ぼします。
歯にはそれぞれ役割があります
前歯や奥歯など、歯の1つ1つの役割は以下となります。
・前歯は本来食べ物をとらえる部分
・犬歯は肉などを切り裂く部分
・小臼歯は切り裂いた物を細かく砕く部分
・大臼歯は物をより細かくすりつぶし、飲み込みやすくする部分
このようにそれぞれ役割が異なっております。
患者様の9割以上が、食べ物を噛むのは奥歯(大臼歯)だと思っています。
かみ癖を治さないと奥歯から歯がなくなっていきます
私は、東京医科歯科大学病院の義歯外来(入れ歯の科)に所属していましたが、歯を失って義歯外来に来る患者様はほぼ大臼歯を失っています。
奥歯でしか食べ物を噛まないため、奥歯に負担が集中し、結果として「虫歯や歯周病になりやすい」「歯が割れてしまう」ことが起こるからです。
いきなり奥歯で食べ物を噛みだすと、本来、理想とする歯の使い方に反してしまうため、奥歯に大きな負担がかかってしまいます。歯を支えている骨が磨り減り、歯茎が腫れたり、歯がグラついたり、最悪の場合、歯が破折して抜歯になってしまいます。
噛み癖を治すためには、いかに奥歯よりも前歯をうまく使うかという話になります。どこで噛むべきかということを説明する歯科医院は少ないですが、いしはた歯科では治療終了後なるべくどの部位でご飯を食べるべきなのかというアドバイスを致します。興味を持たれた方はご質問ください。