顎関節症(がくかんせつしょう)

顎関節症(がくかんせつしょう)とは?
顎関節症とは、「口を開閉するときに顎の関節に異音がする」「口の開閉がうまくできない」「顎を動かす筋肉が痛む」などの症状がでる病気のことです。
顎は入り組んだ形をしており、筋肉と関節と神経が集中しているため、どこかに異常がでると顎が痛んだり動かしにくくなったりします。
顎関節症と疑われる際に、硬いものを食べたり、大きく口を開けたりすると、症状が悪化する恐れがあるので注意してください。
当院には久喜市近隣市町村だけでなく、県内全域(三郷市・上尾市・北本市・桶川市・秩父市・本庄市・深谷市・行田市・毛呂山町・飯能市・さいたま市・所沢市・狭山市・日高市・鶴ヶ島市・川越市・朝霞市・越谷市・鴻巣市・熊谷市等)、小山市・古河市・山形市、仙台市、千葉市、流山市、横浜市、東京都内、潮来市、水戸市、前橋市などかなりの広範囲から患者さんがいらしております。また大学病院で治療が奏功しない患者さんも多数来院し、皆様改善しております。
顎関節の場所
「顎関節」は、両側の耳(耳珠)の前にあります。
顎の関節は図に示すように、耳の穴の前側から前方約13ミリメートルのところに関節の中心があります。この部分に指を当てて口を開け閉めすると、下顎頭の動きを触って感じることができます。
顎関節の構造
顎関節を構成している組織は、以下の通りです。
・関節窩(かんせつか)
・下顎頭(かがくとう)
・関節円板(かんせつえんばん)
・円板後部結合組織(えんばんこうぶけつごうそしき)
・外側翼突筋(がいそくよくとつきん)
・関節包(かんせつほう)
・外側靭帯(がいそくじんたい)
下顎を動かす筋肉は、「外側翼突筋」「内側翼突筋」、「側頭筋(そくとうきん)」「 咬筋(こうきん)」で構成されています。
肘や膝の関節と違って、顎関節は蝶番運動と滑走運動ができます。
蝶番運動のイメージ図
Tadashi Sotokawa – sotokawaが作成, パブリック・ドメイン, リンクによる
滑走運動のイメージ図
Tadashi Sotokawa – sotokawaが作成, パブリック・ドメイン, リンクによる
引用元:ウィキペディア
上顎は頭蓋骨に固定されているため、位置はずれません。ですが、下顎には遊びがあり、容易にずらすことができる組織です。そのため、顎をずらすことは簡単にできます。
顎関節症に現れる症状について
以下の症状が現れた場合、顎関節症の疑いがあります。
・顎関節を動かすと異音が聞こえる
・口を大きく開くと痛い
・口を閉じれなくなる
・顔面に痛みがある
・顔面の筋肉疲労がある
・口を左右にうまく動かせない
・顎が外れることがある
また、副症状として、顎周辺のみではなく全身の部位に何かしらの症状が現れることもあります。
・耳に痛みがある
・耳鳴りがする
・偏頭痛
・眼球疲労
・肩こり
・腰痛
・めまい
・歯や舌の痛み
上記の症状が現れた場合、顎関節症によるものとは限りませんが、早いうちに専門医による診察を受けましょう。
顎関節症になる原因
顎関節症は多因子性疾患と言われています。
多因子疾患とは、多数の遺伝子が作用して、生活習慣や遺伝などの要因が合わさって起こる病気のことです。
因子には解剖学的要因・生理学的要因・外傷要因・咬合要因・精神的要因・行動要因といくつかの要因がありますが、この中で早期に改善が出来るのは行動要因だけです。
解剖学的要因:骨や筋肉、神経などの組織の異常が原因となるものを解剖学的要因
生物学的要因:筋力がないなどの要因
外傷要因:怪我などの要因
咬合要因:不正咬合などの要因
精神的要因:ストレスなどの要因
行動要因:生活習慣などの要因
行動要因に関して調査したところ下記の通りでした。
1、片がみ癖 64.8%
2、不良姿勢 59.8%
3、多忙な仕事 57.7%
4、TCH 50.4%
上記より顎関節症の主な行動要因としては「片がみ癖」「寝るときの姿勢」「無意識の食いしばり」「頬杖」「楽器の演奏時などの無理な姿勢」「日常生活で負担のかかる姿勢や動作」「ストレス(精神的や肉体的)」などの原因があります。
複数の原因が重なったときに、顎関節症が発症します。
また、当院来院患者様の80%以上の方が片がみ癖による顎関節症です。
片がみ癖は歩行・呼吸・嚥下と同様に無意識行動(自動化・ループ化・エングラムとも言う)なので患者さんは無自覚ですが、長期片がみを継続することで顎関節の動きに偏り・左右差が発生してしまいます。
顎関節症を悪化させてしまう習慣や誤った治療については、「あなたは大丈夫?顎関節症の人がやってはいけないこと」で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
顎関節症の治療法
当院の顎関節症治療は、以下のようなその場しのぎの対症療法ではなく、きちんと原因から治す原因療法を行っております。
【その場しのぎの対症療法と考えられるもの】
・マウスピースをはめてただ様子をみていただく
・痛み止めを処方する
・関節腔に注射をする
・レーザを照射する
・筋弛緩薬を注射する
・温罨法
また、最新の知見では顎関節症の治療目的にマウスピースをはめて様子を見ることは無意味・もしくは悪化の可能性があるためしてはいけないとなっております。ただしこれを知らない歯科医が90%以上と思われます。
いしはた歯科クリニックでは、食べ物の噛み方に由来した顎関節の位置のずれを矯正するための原因療法として、顎関節症になってしまった要因となる例えば噛み方の癖やTCH(歯列接触癖)などの癖を患者様に知って自覚していただきます。そして顎への悪影響を知っていただき、再発しないように下顎の正しい使い方をレクチャーし、下顎の運動障害を改善していく機能的運動療法(ストレッチ療法)を実施しています。
初診時に必ず顎関節の変形や腫瘍の有無を確認するためのCT検査とオリジナルマウスピースの型どりを行っております。
初診時に12000~20000円程度はかかりますのでご了承下さい。この中には自由診療での顎関節症に対する指導代(5000円~10000円)も含まれます。またその後の指導でも自費で3000円程度かかることもあります。顎関節症を改善する為の指導は当院オリジナルのものになりますので保険診療分以外に費用がかかります。なお顎の治療のみで来院される方もおりますが、一回自費で5000円いただきます。クリーニングを当院でされる方が正直費用は安くなりますのでどちらにするかご検討下さい。また治療効果の確認のため顎の動きの動画撮影をしますのでそこもご了承下さい。
顎関節症の治療例
右側の顎関節部に痛みがあり、口を開け閉めする際に顎の周囲で音が鳴る患者さんの場合
食事の時に常に右側の奥歯で噛む癖がある患者さんでした。
しばらくの間右側では一切かまずに、下顎を意識して左前にずらして左側の中間の歯(犬歯や小臼歯の辺り)で常に食べていただきました。癖を治すのは、右利きを左利きにするようなもの、慣れるまで大変違和感があったそうです。慣れるまで(1~2週間)はご飯を美味しく感じなくなり、食事に時間がかかってしまったそうです。
右側の顎関節部のかみ癖を取るためには、左前方で噛むことに慣れていただき、寝る時は左側を下にして寝る、一人でいる時や寝る時は下顎を左前方にずらしておく。鼻の下を伸ばす等のトレーニングをしていただきました。痛みは二週間、開け閉めの時の顎の音は一カ月半で完全になくなりました。これらは当院で行う治療、指導の一部です。
当院では顎関節症を治すために様々な指示を出します。
それを素直に実行している方は症状が改善し、自分で下顎をコントロールすることが出来るようになります。
現在顎関節学会や大学病院ではクリック音(コキコキ、ジャリジャリ)は治せないとされていますが、当院の治療法ではクリック音がならない状態に治せます。
実際大学病院で治らなかった方も多数治しております。
痛みの改善には2週間~1か月、関節雑音の改善には1か月~3カ月かかることが多いです。
顎関節症の関節雑音の種類について
1 クリック音(相反性クリック・レシプロカルクリック)
クリック音は口を開け始めると早期に発生し、口を閉じる際にも発生します。
いずれの場合も、音の発生原因は、関節円板と呼ばれる部位にあります。
口を開ける時になるクリックをリダクションクリック。
口を閉じる時になるクリックをラクセーションクリックと言います。
関節円板の位置が前方にズレることで、口を開け閉めする際に顎関節と関節円板がに前後的に乗り降りする時に音が発生します。
クリック音は消すことが可能で大体1~3カ月程度で当院の患者さんはなくなっています。
症状が進行すると、クリック音が消失して、口が開かなくなるという症状(クローズドロック)が現れることがあるようなので、痛みがあったり、口が開かなくなった場合には早めに受診するのは当然として、痛くないから気にしていない方もこの際きちんと治しましょう。
2 クレピタス音(捻髪音)
クレピタス音は「ジャリジャリ」と表現される事が多いです。
捻髪音とも言いますが、髪の毛を指でつまんで擦り合わせた時の「ジャリジャリ」といった感じのような音です。
クロースドロックと言って、関節円板が完全に前方に位置し、口が開きにくい状態が長期化した場合に発生する関節雑音です。
顎関節の下顎頭が損傷したり、軟骨(関節円板)の変形や穿孔(穴が開く)によって生じる音で、顎関節症が進行している場合に多くなります。
ですからクレピタス音は完全に消すのが難しい関節雑音です。ただしこれも当院のやり方で消失出来る場合があります。
3 エミネンスクリック音
エミネンスクリック音は前の2つの音とはまったく異なり、年齢と共に関節がゆるくなったために通常以上に口が開いてしまい(上下前歯の間が55~60mm以上)、下顎頭が関節から前方に飛び出す際に大きく明瞭に発生する音です。
小さい頃から大きな口を開けて食べ物を頬張ったり、拳を口の中に入れて遊んでいたり、大声で歌い続けたりする経験がある人など大口を開けることが習慣となっている方に見られます。
また、加齢とともに硬いものを避けるようになると、咀嚼筋(物を噛む際に必要な口周りの筋肉をいくつかまとめたもの)が衰え、関節がゆるくなる場合もあります。
大きく口を開けることを避けて、よく噛んで咀嚼筋を鍛えることが肝心です。
治療の必要性はありませんが、放置すると脱臼を起こすこともしばしばあります。