入れ歯が痛い・我慢できない!原因や予防・対処法について解説
公開日:2022/08/26
「入れ歯をすると食事の際に噛んだら痛い」
「入れ歯をして痛いのが我慢できない」
このように入れ歯をして痛い思いをしたという方は、
「何が原因なのか」「対策はあるのか」という点が気になるのではないでしょうか。
入れ歯をして痛い思いをする原因は人によって様々です。
また、入れ歯をして痛い思いをしないように対策・予防をする方法はあります。
この記事では、入れ歯をして痛い思いをする原因や対処法はもちろん、入れ歯をしないことで起こる悪影響についても解説しています。
記事の内容を理解することで、「入れ歯をすると痛い」という悩みの解決に近づくでしょう。
入れ歯で痛い思いをして悩んでいるという方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
1. 入れ歯で痛い思いをする原因
入れ歯で痛い思いをしてしまう原因は、具体的に何が挙げられるのでしょうか。
国立研究開発法人国立長寿医療研究センターでは、義歯(入れ歯)による痛みの原因について下記8つを挙げ解説しています。
1.顎堤などの口腔内の形態の問題
2.食事の問題
3.咬合(噛みあわせ)の問題
4.唾液の問題
5.適合・設計の問題
6.義歯の管理の問題
7.残存歯(残っている歯)の問題
8.カンジダの問題
参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター|義歯の痛みの原因は?
上記を参考に、この記事でもそれぞれの原因について解説をしていきたいと思います。
1-1.顎堤などの口腔内の形態の問題
顎堤(がくてい)とは、歯が生えている・歯が生えていた歯茎の土手状に盛り上がった箇所を指します。
この歯茎の盛り上がった箇所に入れ歯をのせるのですが、この顎堤は歯が失われたタイミングから刺激がなくなることで徐々に退縮していきます。
退縮が起こり歯茎の盛り上がりが少なくなると入れ歯が安定しなくなり、口内でズレて痛みが生じる原因となってしまいます。
顎堤以外の口腔内の形態の問題例として、一つ骨隆起が挙げられます。
骨隆起とは、骨が必要以上に刺激を受けることで発育し過ぎてコブのように成長してしまった状態です。
このような骨隆起の異常も、入れ歯をした時に痛みが伴う原因の一つとなります。
1-2.食事の問題
新しい入れ歯をしたばかりの時は、食事で硬いものや分厚いものを食べると痛みが出るケースがあります。
これは入れ歯の調整が不十分であるために起きます。
前提として、入れ歯は完成した段階は口内に入れるのが問題ないというだけで、完成してからの調整が非常に重要です。
使い続ける中で出てきた不具合を徐々に歯科医師が調整していき、患者さんにとって最適な入れ歯が完成するのです。
そのため、まだ調整が不十分である作り終えたばかりの入れ歯は、食事の際に痛みがでることもあります。
1-3.咬合(噛みあわせ)の問題
噛み合わせが少しでもズレると、それが痛みの原因になるケースもあります。
噛み合わせが悪い状態だと、入れ歯が口内で不安定な状態になるリスクがあり、入れ歯ががたつくようになると一部分に入れ歯が強く当たってしまい痛みが出てしまうのです。
1-4.唾液の問題
唾液の量は、入れ歯を口内で安定させる上で非常に重要です。
その理由としては、唾液は入れ歯と歯茎の粘膜の間で潤滑油の役割を担っているからです。
唾液の量が不足してしまうと、いくら口内に適した入れ歯を作製することができていても、歯茎の表面がカサカサしてしまい、入れ歯が擦れて痛みが生じたり口内炎になりやすくなってしまったりします。
1-5.適合・設計の問題
入れ歯がその患者さんの口内に合わせて適切に設計・作製できていない場合、それが原因で痛みが生じることがあります。
1-6.義歯の管理の問題
患者さん自身が入れ歯を清潔に管理できていないために、痛みが生じるケースもあります。
入れ歯を適切な頻度で清掃したり、歯磨きが適切にできていなかったりすると、口内炎や誤嚥性肺炎のリスクが高まってしまうのです。
1-7.残存歯(残っている歯)の問題
これは、主に部分入れ歯のケースです。
部分入れ歯のバネを残存歯にかけていて、その締め付けが強いとバネをかけている歯に痛みが生じやすくなるのです。
他にも、バネをかけている歯や歯茎に問題があり、痛みが出るという場合もあります。
1-8.カンジダの問題
口の中には、虫歯や歯周病の原因となる細菌も含めて、数百を超える様々な種類の細菌とカビの仲間が存在しています。
そのカビの仲間の中でも有名なのが、カンジダ菌です。
カンジダ菌が口腔内で多く繁殖すると、白い斑点が口内の粘膜に多く現れるようになり、それと同時に痛みも伴います。
入れ歯を使われている方は、このカンジダ菌が繁殖しやすいとも言われており、カンジダ菌が多く繁殖したことで痛みが出ているケースもあるのです。
2.入れ歯をせず放置することで起こる悪影響
入れ歯をすると痛いことから「入れ歯をしたくない」という気持ちが強くなり、入れ歯をせず放置してしまう方もいると思います。
入れ歯をせずに放置をしてしまうと、身体に様々な悪影響が出てしまうので、この状態は改善が必要です。
具体的にどのような悪影響が出るかというと、下記6つが挙げられます。
1.噛み合わせや歯並びが悪くなる
2.顔にシワやたるみが出てくる
3.胃腸に負担がかかる
4.認知症になりやすくなる
5.低栄養・肥満になりやすくなる
6.死亡リスクが上がる
それぞれ解説します。
2-1.噛み合わせや歯並びが悪くなる
歯が抜けた場所を入れ歯もせず放置すると、抜けた歯の周りの歯並びが悪くなっていきます。
歯は隣り合う歯と力を掛け合うことで支え合い、位置を保っています。
そのため、支え合う歯が無くなってしまったら、位置を正常に保つことができず健康な歯が傾いてしまうようになるのです。
このようなことから、噛み合わせや歯並びが悪くなってしまうというわけです。
2-2.顔にシワやたるみが出てくる
歯が抜けたあと入れ歯をせずに放置していると、歯が抜けてしまった部分の噛む力が衰えてしまいます。
噛む力が衰えてしまうと、その部分の顔の筋力が衰えてしまい、その結果顔にシワやたるみが出てしまいます。
2-3.胃腸に負担がかかる
歯が抜けた状態で入れ歯をせず、そのまま食事をすると歯が生えている状態より食べ物を細かく噛み砕くことができず、胃腸に負担がかかるようになってしまいます。
2-4.認知症になりやすくなる
噛むという行為は、脳へ適切な刺激を与えることにもつながっています。
歯が抜けた状態だと、歯が抜けた部分から噛む刺激を脳に与えることはできなくなってしまうため、認知症になりやすくなってしまうとも言われています。
例えば、奥歯がなく義歯も使用していない人は自分の歯が20本以上ある人よりも認知症になるリスクが1.85倍高いというデータもあります。
一方、奥歯がなくても義歯を使って奥歯でしっかり噛めている人は、認知症リスクが1.09倍と天然歯がある人とほとんど変わりませんでした。
この結果からわかるように、噛むという行為による脳への刺激は認知症予防にとても大切なのです。
2-5.低栄養・肥満になりやすくなる
入れ歯をせずに食事をするようになると、低栄養や肥満になりやすくなってしまいます。
具体的に解説すると、まず入れ歯をするケースとして多く挙げられるのが奥歯です。
この奥歯が無くなると硬いものが噛みづらくなり、やわらかいもの・炭水化物ばかり食べるようになってしまう方が多くいらっしゃいます。
その結果、低栄養状態や肥満になってしまうのです。
このように、奥歯を失うと栄養状態が極端に悪くなってしまう方が多くいらっしゃいます。
歯が19本以下になってしまうと、噛めなくなるものが一気に増え、食生活に不自由をきたすため、入れ歯やインプラントなどの治療を受けることが重要です。
2-6.死亡リスクが上がる
入れ歯を使用せず歯が無い状態で放置していると、歯が全部ある方と比較した際に、歯が無い方は死亡リスクが上がります。
実際に歯が10本以下で義歯未使用だと、20本以上の方と比較して死亡リスクが1.8倍も高くなるのです。
他にも、奥歯がない人は奥歯でしっかり噛める人と比べて脳卒中・心筋梗塞・がん・肺炎での死亡リスクが80%以上高いというデータもあります。
ご自身の寿命を延ばし、病気にかからず健康で過ごすためにも、歯を失ってしまった際は放置せず、入れ歯をすることが大切です。
3.入れ歯をすると痛む際の対処法
入れ歯をすると痛む場合、原因に合わせて対策をとる必要があります。
今回は下記の4つの対策について解説します。
1.歯科医師に相談し何が原因か詳しく調べる
2.食事内容を工夫する
3.口内を清潔に保つ
4.セカンドオピニオンも検討する
3-1.歯科医師に相談し何が原因か詳しく調べる
入れ歯をして痛みが発生する原因を専門的な知識の無い方が、自分で正しく把握することは難しいでしょう。
原因に合わせて適切な対策が取れるよう、専門家である歯科医師に相談をして何が原因なのか正しく判断してもらうことが大切です。
歯科医師に相談をすることで、患者さん自身では対処できない「入れ歯本体の調整」や「噛み合わせの調整」なども適切に対応してくれるでしょう。
3-2.食事内容を工夫する
新しく入れ歯を作成したばかりで食事の際に痛みが出ている場合は、食事の内容を工夫することで痛みを感じないようにできる可能性があります。
新しく入れ歯を作成したばかりだと、まだ調整が不十分なことが原因で硬いものや分厚いものを食べた時に痛みが生じるケースが多いため、硬いものや分厚いものを避け、なるべくやわらかい食べ物を摂るようにすると良いでしょう。
また、食事の際に痛みが出ることは健診時に歯科医師にも相談をするようにしましょう。
3-3.口内を清潔に保つ
口内には様々な種類の細菌やカビの仲間がいます。
「歯磨きをしない」「入れ歯を清掃しない」など口内を不衛生な状態にしていると、口内炎ができたり、最悪のケースでは細菌が繁殖して痛みを生じさせる原因となってしまったりするのです。
最悪のケースに至る前に、「歯磨きを適切な頻度でする」「入れ歯の清掃を怠らない」などをして、口内を清潔に保ちましょう。
3-4.セカンドオピニオンも検討する
入れ歯で痛い思いをしている原因をかかりつけの歯科医師が明確にできていない場合や、今受けている治療が他の歯科医師から見ても最良であるか検討するためにも、必要に応じてセカンドオピニオンを受けることはオススメです。
セカンドオピニオンを受けることで、今不安に思っていることや悩みを早期に解決できるかもしれません。
4.入れ歯で痛い思いをする前に予防でできること
入れ歯をするにあたって痛い思いをしてから改善するのではなく、痛い思いをする前に予防ができたら良いですよね。
今回は入れ歯で痛い思いをする前に予防できることを二つ紹介したいと思います。
4-1.入れ歯治療に精通している歯科医師を探す
様々な歯科医師がある中、入れ歯での治療が得意な歯科医師を選ぶことが大切です。
歯科治療は入れ歯の治療だけでなく、矯正歯科やインプラント・審美歯科など様々な診療科目があります。
その中でも入れ歯の治療に力を入れていて、入れ歯治療を専門的に対応している歯科医師を選ぶことで、自分に合った入れ歯作製を提案してもらうことができ、痛みを感じないような入れ歯が完成する可能性が高まります。
4-2.保険ではなく自費の入れ歯も検討する
保険で作製できる入れ歯は、入れ歯の作り方や材料が限定されているため、必ずしも自分の口内に最適な入れ歯になるかどうかはわかりません。
一方、自費の入れ歯は患者さんの口内に合わせて最適な作り方と材料を選ぶことが可能です。
詳しくは当院の「入れ歯作製・調整ページ」と「保険の入れ歯で本当に十分?選び方や自費が良い理由も解説」という記事で解説しているので、詳細が気になるという方は是非ご確認ください。
5.まとめ
入れ歯をした時に痛い思いをしてしまう原因は、下記のように様々あります。
1.顎堤などの口腔内の形態の問題
2.食事の問題
3.咬合(噛みあわせ)の問題
4.唾液の問題
5.適合・設計の問題
6.義歯の管理の問題
7.残存歯(残っている歯)の問題
8.カンジダの問題
しかし、入れ歯をすると痛いからといって、何もせず放置してしまうことは身体に悪影響を及ぼすリスクがあるため避けなければなりません。
入れ歯をして痛みが発生する原因を正しく理解し、それに伴った対処を施すことで、入れ歯を快適に使用することができます。
当院では、入れ歯治療に力を入れて診療を行なっており、患者様が一生涯しっかり噛むことができるよう、患者様の健康寿命を増進できるよう、強い想いを持って取り組んでおります。
「入れ歯をすると痛い」
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とお悩みの方は、いしはた歯科クリニックへご相談ください。
KAZUKI.ISHIHATA